腰痛について

「腰痛は二足で立った人類の宿命」といわれます。四足動物よりも腰に体重が集中するう
えに、不安定に見えるためでしょう。確かにヒトは腰痛になることはありますが、宿命で
はありません。つまり、避けられないものではないということです。二足で立てるように
なった仕組みを理解して、それを壊さないように維持すれば避けられるのです。
 ヒトと同様に、地面と二点で接地しているものに自転車があります。わずか二点の接地
でも安定するので、利用している人は多いと思います。
 自転車に乗る練習の段階では、何回も転倒します。それは、頭でバランスを取るように
考えて体を動かすので、少しでも対応が遅れると転倒してしまうのです。上手に乗れるよ
引こなると、頭でバランスを取ろうとは考えません。それは、「意識しないでも、体が絶
えずバランスを取るように動く」からです。これを「不断の動き」といいます。 自転車は、
この「不断の動き」かおるからこそ、安定するのです。
 私達は普段何気なく立ちますが、立つためには、絶えず揺れ動く上半身と下半身のバラ
ンスをとる骨盤の「不断の動き」が必要になります。
 医学書をみると、「立つためには、/」ヽ脳や耳の平衡神経と俊敏に動く腹筋や背筋などの
反射が必要」と書いてあります。しかし、常に揺れ動く体を立たせるには、離れた腰と頭
の間で情報を交換し、筋肉を収縮させて体を動かすような暇はありません。もっと速い対
応ができないと、自転車練習の時のように転倒してしまいます。骨盤が体の傾きを察知し
て、即座に動くようになれば、クイムロスのない、安定した「不断の動き」ができるように
なります。実は、ヒトの骨盤にはこのシステ熹が組み込まれているのです。つまり、ヒト
が二足で安定して立てるのは神経反射だけでぼかく、それよりも速いバランスシステムが
骨盤にあるからなのです。
 骨盤のシステムは、地球の中心に向かう重力の線に対して体がどれだけ傾いているかを
察知して、即、重力線に戻すものです。これはまさにやじろべえや起き上がりこぼしのよ
うなものです。健全な骨盤にはこのような「不断の動き」ができるシステムが働いているの
です。
 腰痛が人類の宿命で、移動に支障をきたす出来損ないであれば、歴史の途上で消滅して
いたはずです。しかし、500万年以上も存続していますし、腰痛が人類の宿命であるなら
ば、全てのヒトが腰痛になるはずです。腰痛になるヒトにはそれなりの理由かおります。
その理由がわかれば、逆に腰痛を未然に防ぐ手段もみえてきます。ですから、腰痛は人類
の宿命ではありません。