ギックリ腰

重力に順応して生活するためには、体重をしっかり支える丈夫な骨と滑らかに動く関節
が必要不可欠です。
 ギックリ腰は、突然、立ち座りや寝起き、歩くことなど全ての動作が不自由になる激烈
な腰痛です。
 整形外科では、一般に、レントゲンを撮り、特別な異常がなければ急性腰痛症として「安
静と消炎鎮痛剤(内服・坐薬・注射・湿布)」の指導と処置がなされます。
 腰痛を考える時、イタリアの「ビサの斜塔」が参考になります。塔が傾いたのは偶然では
なく、塔の地盤工事にミスがあったからです。地盤の軟弱な側が沈み、塔が傾くごく自然
なことです。その影響で今日も少しずつ塔は傾き、壁にヒビが入ってきます。それでも、
世界遺産の保存のために基盤と壁の補修工事を毎年行っています。
 ギックリ腰の人は付き添いに支えられ、背骨が傾いた状態で来ます。これはビサの斜塔
と全く同じ理由で、背骨を支持する骨盤に不安定な状況(潤滑不全)があるために、背骨が
傾いてしまうのです。傾き曲がった背骨に付属する筋肉(壁)には異常な負担がかかり、ヒ
ビならぬ急性の筋肉炎で激痛が生じます。(建物は一方向に傾き続けて倒れますが、ヒトは、
傾く途中で反対側に曲がり、倒れないように対応します。)
 整形外科では腰痛の患者に、まず、レントゲン撮影を行います。その画像診断からよく
聞かれることは、                一
 「背骨と背骨の間隔が狭くなっている」
 「背骨が後ろから見て曲がっている」
などです。このような、背骨の状況だと、一般的には「牽引治療して様子をみましょう」と
なります。しかし、牽引して隙間が拡がるものではありません。それに、背骨が曲がって
いる原因はビサの斜塔のように、地盤である骨盤に歪みがあるはずなのに、骨盤を注目し
たコメントはあまり聞かれません。
 F背骨と背骨の隙間が狭くなっている」とは、背骨と背骨の間にある椎間板が薄くなって
いる状態です。中高年になると椎間板は自然に脱水して薄くなるので問題ありませんが、
若年者で薄くなる場合、椎間板は消しゴムのように擦り減っているわけですから、椎間板
に過剰な圧力と熱がたっまって破壊されたと解釈できます。その原因は、骨盤の仙腸関節
の潤滑不全です。骨盤の異常が背骨の湾曲を狂わせ七椎間板に過剰な圧力がかかる状況を
作っているのですから、骨盤を整えることが先決です。